痔は、四足動物には見られず、人類が起立歩行するがゆえの病気と想像できます。恐らく、ピテカントロプスの頃から人類は、これと付き合っていたと推察されます。
その治療の歴史は、古く、紀元前2500年頃エジプト宮廷に肛門医が存在したと記録されています。
医聖ヒポクラテスは肛門鏡やゾンデ(細い金属の棒)を作っていました。
また有名なポンペイの遺跡で肛門診察器具が発見されています。
以後の、主な治療法はとしては、本質的には、切ったり、しばったり、焼いたりなどで、特に西洋では、外科的治療が中心で、1800年台のクロロホルムの出現までは、治療の現場はとても悲惨な状況だったろうと推察されます。
一方、東洋では、紀元前1000年頃、インドのアーユルヴェーダや中国の周の時代から痔治療の研究がされていました。
こちらでは、痔も全身病と考える傾向で、インドも中国も薬草や鉱物などを利用する方法が発展しました。
その流れからか、早くも200年頃、華佗という名医が、酒で麻沸散と言う薬をのませて痔の治療を行っております。
インドのアーユルヴェーダ医学には、今に続く素晴らしい痔瘻治療法がありますし、中国の古い漢方にはしっかりとした痔の治療法が記載されています
現代の主流の治療法は、1800年代よりイギリスのセントマークス病院などを中心として研究され確立された外科的治療法を基礎として発展されたものです。
内痔核は静脈の塊、切れ痔は狭い肛門、痔ろうは慢性の細菌感染、と、いずれも外科的処置が合理的かつどうしても必要な病気であります。
当院でも、早くから痔ろうに対するゴムシートン法を試行し、実績を積んでおります。
また、内痔核の注射療法を積極的に採用し、入院期間の短縮、仕事への早期復帰に役立てております。
今でも世界中で痔の新しい治療法が開発されており、その良いものを、実治療に役立てることが私どもの使命と思い、研鑽してまいりたいと思っております。